最近、院内、学会等で”医師の働き方改革”について語られる機会が多い。具体的には2024年から年間の時間外労働の上限を960時間に制限され、この制限は義務化される。この規則で何が変わるかというと、医師の過重労働が削減されることと、自分が思うに機能が曖昧な中小規模の病院が淘汰されることだと思う。例えば、医者が30人いたとして、5人ずつ6施設に人的資源を分けるよりも15人ずつ2施設に分けた方がコストがかからず効率も良い。五人で365日カバーしようと思うと、単純に5日に1日当直をすることになるが、15人で当直する場合は単純に当直回数は1/3になる。2施設に減らした場合、カバーする患者数は3倍になるが、当直中は忙しくなるかもしれないが、休みは取れるので働く側としては楽になる。なんとなく365日拘束されるよりは精神的にも良い。働き方改革により義務化される規則をどちらの病院で達成しやすいかというと明らかに後者となる。
中小病院で救急患者を診ている施設では、上記の規則が守れなくなり診療報酬かなんらかでの罰則が生じることが予想される。当然病院経営は苦しくなるが、今回の改正は国は本気であり、この規則が守れない病院は潰れても構わないという印象だ。働き方改革は医師の過重労働を防ぐのと同時に、医療費の圧縮を図る目的もあると思われる。細かい時期は忘れたが、少し前は急性期病床に国は力を入れていたが、高齢化社会に直面しており、これからは回復期病床の数を増やそうとしているようだ。実際、自分の住んでいる地域にある600床程度の病院は、移転を機に500床ほどにベッド数を減らす予定だ。高齢化社会が成熟して人口が減少してくるので、それに対する対応かと思う。また病院での外来診療は減らす方向であり、より高度な医療や手術に特化する方向に移行していくだろう。病院の統廃合とかかりつけ医の二極化は進んでいくと思われる。
最近の医学生は外科を敬遠して内科系を志望する学生が多い印象を受ける。よく話を聞いてみると、外科系は一人前になるのに時間がかかる。色々やらなければならないことが多く大変そうだということだ。内科系は確かに独り立ちするのが早いかもしれないが、逆に言えば、誰でもできると言い換えられなくもない。医者も年齢が上がっていくと、職位が上がって給料も増えるが、持っているスキルが同じであれば給料が安い方が病院側からの需要が多い。要するに取り替えがきくということだ。自分が医学部を受験していたことは、大体医学科の定員は100名だったが、現在は120名のところが多い、ただ日本の人口が減少していくと近い将来医者が仕事にあぶれることも可能性として十分考えられる。最近はAIによる問診や画像診断などの技術が進んでおり、セルフメディケーションなども開放されてきているので内科医の需要は減るのではないかと考えている。自分が外科系だからそう思うのかもしれないが、手術はまだまだ人がやる領域なのでロボットでは難しい。外科医は替えがきかないし、人数が少ないと希少価値も出てくる。結局、人が死ぬ診療科は緊急の呼び出しなどはあるのでどこも忙しい。どうせ医者をするなら外科系の方がやりがいがあるのではないかと思う。さらには、病院経営で増収しようと思うと手術件数は重要だ。外来の診察や検査代は数をこなさないといけないが、手術で得られる診療報酬はこれらよりもはるかに大きい。ファミリードクターを目指す人は内科系がいいかもしれないが、大きな病院でバリバリ働きたいのであれば外科系の方がこれからは良いのかもしれない。