地方国立大学の教授選について、自分の見聞きしたことを語りたいと思う。教授選は通常公募で行われる。大学のホームページなどで募集要項などが載っており、選考のために募集をかける。選考基準はいろいろだが、医学教育の他、研究などの業績以外にも、資金獲得能力や、適切な医局運営ができるかどうかなどの能力も評価の対象となる。まず教授選の公示があり、候補者が集まると、書類選考が行われ、最終的に3-4名の候補者が選ばれる。候補者は公聴会での審査を受けて、教授会による投票で選ばれる。
公聴会は教授でなくても参加できた(どこもそうだとは限らないが)。記憶が曖昧だが、自分が参加した時の様子だと。15分程度、自分の業績や抱負などをスライドにまとめ、その後確か10分程度の英語による模擬講義が行われていた。あとの30-40分で質疑応答が行われる。それぞれの大学病院や診療科によって求められる能力が変わってくる。例えば大学自体ががんの拠点病院としての機能を強化しているところだと、腫瘍が専門である方が有利かもしれないし、地域医療の強化や急患診療に力を入れている場合は、脳血管障害が専門の方がいいかもしれない。
また、業績についても一見たくさん論文を書いているように見えても、共著が多かったり、最近の論文数が少なかったりしているとあまりアクティブでない印象を受ける。また、業績が凄くても性格的な評判が良くないと不利に働くように思う。医者の世界は狭いので、同業者に聞くとすぐにその学会での評判はわかるものだ。特に出身大学では大学内での評判が悪いと選ばれないことが多いように感じる。また出身大学から二人候補者が出願していると票が割れるし、その集団がまとまっていないと捉えられるため不利になるかもしれない。
また、年齢は50歳前後までの方が良いように思う。定年まであと10年とかだと大きなプロジェクトが完了する前に退職してしまうことになる。したがって、自分にあぶらがのっている時に教授選に出れるようになる方が有利だ。出身大学に出る方が、教授選では有利だが現職の年齢が近いとその道は断たれる。
白い巨塔のようなイメージがあるかもしれないが、基本的には大学病院の運営や公益性なども十分考慮されていると思う。足の引っ張り合いはしているのを見聞きしたりしているが、ドラマのようにお金でどうこうというのはおそらくないだろうと思う。昔ほど今は教授になってもメリットはないかもしれない。学生の教育、研究費の獲得や医局運営、もちろん診療などしないといけないことが多岐にわたるし、大学自体の給料は決して多くはない。大学病院に勤務している医師は副業をして生活費を稼いでいるが、教授も例外ではない。それでも、医学部教授はその地域での医療に大きな影響力がある。教育、研究、診療ももちろん大切だが、リーダーシップを発揮して、集団をまとめていける良識のある人が向いているかもしれない。