最近、医療業界への風当たりが強くなっている。日本の医療費は令和4年度に約45兆で前年度からは2兆円増加しているらしい。年々増加する医療費の原因としては、高齢者の増加、年々高くなる医薬品が思いつく。一昔前までは医学部は受験界隈では勝ち組だったが、今後はどうなるか分からない。その辺を少し考察してみたいと思う。
地方では医者の給料はほかの業種に比べると高いと思う。地方の進学校を卒業して、有名大学を卒業して地元で就職する人は大体、電力会社か地方銀行、公務員が多かった気がする。本社が東京で地方に転勤してくる人もいるだろう。そのなかでも医者は安定していて、少々性格に難があっても周りが合わせてくれるところもあるので人気な仕事の一つだと思う。特に開業すると、だいたい税金対策か分からないが高級車に乗ったりしていて羽振りがよさそうだった。一方で都会は、子供の教育事情なんかで住みたい人が多いので医者も集まってくる。需要と供給の関係で都会のほうが相対的に医者の給料は低くなる。おそらく都内だと医者同士で結婚しないと、子供が全部私立の学校なんかには入れないのではないか、特に私立の医学部には到底進学させられないと思われる。医者の給料は求人なんかを見てもらえればわかると思うがピークで年収1500-2000万円くらいではないかと思う。この額面は当然多いと思うが、おそらく自分が医者になった2000年くらいからほとんど変わっていないと思う。大学から派遣で行っていた病院の当直、外来の給料も全く変わっていない。物価は当然上がっているので相対的には給料は下がっている。
1990年~2000年の頃は、まだ製薬メーカーからの接待が許されている時代だったが、それもなくなった。昔は毎週看護師さんをつれて飲み歩いていた先生がいたが、最近は世の流れか財布事情かみんなすぐに家に帰る。歓送迎会でもあまり参加しない先生も多い。子供にもいい教育を受けさせようとする医者が多いため、当然子供を進学塾に行かせる。進学塾も我々世代の頃と比べるとびっくりするくらい授業料が高い。小学校高学年だと毎月ひとり4-5万円はかかる。私学の中学・高校に行かせるのと同じくらいかかる。例えば私学の中高一貫校に入学すると一人だいたい10万円は毎月かかる。これに食費や衣服などにもお金がかかるので、それなりに給料をもらっていてもすぐになくなる。例えば公立学校に通ったとすると、塾にかよってもおそらく学費は半分以下に抑えられると思われる。子供一人だと5万円、二人だと10万円は毎月負担が軽くなる計算だ。年間では120-150万円の経費削減である。所得税は収入が増えると当然増える。医者の給料だと3割くらいは税金で持っていかれる。手取り150万円増やそうと思うと額面で250万円増えないといけない。とにかく子供に金がかかる。最近少子化対策のためか、3人子供がいると大学の授業料が免除になるらしい。また子供手当や高校の授業料も収入制限が撤廃されている。それなりに給料をもらっていてもこれらの補助がなければ結構きつい。子供を公立校に行かせればすむ話だが、夫婦間で意見が一致するかどうかは分からない。
社会保障費が年々増加しており、診療報酬もだいぶきついみたいだ。コロナの流行の時は補助金等で経営がまもられていたが、直近の診療報酬改定で赤字の病院が4割くらいになるそうだ。病院経営はかなりきつい様子だ。コメの価格も上がっているように物価高で、他の業種の給料が上がっているので、最近は事務や清掃などの非専門の職員の募集が難しくなっているそうだ。そりゃあバイト代が最近だと時給1500円のところもよく見かけるのでわざわざ安いところで働く必要もないだろう。医療業界のトータルの収入は国からの医療費に規定されているので、他の病院との取り合いである。また無制限に儲かるような仕組みにはなっていない。給料を上げたくても上げられない病院も少なくないだろう。
最近ChatGPTが出現したが、患者の症状や検査データを打ち込むとそれなりの鑑別診断を上げてくる。ちょっとした研修医、下手したら専門医よりも気の利いた答えを用意してくる。先日、抄読会の資料をChatGPTで作成したが、ほとんど手直しがいらない精度で要約してくれた。内科や放射線科など診断がメインの診療科では医者がいらなくなる日もそう遠くないのではないかと思われる。人工知能やロボットがすぐには変わりができない外科医は、今はなり手が少なくきついかもしれないが、将来的にはよいのではないかとも思う。
医学部は最近だと、宮城と千葉にそれぞれ東北医科薬科大学、国際医療福祉大学が創設され、医学部の定員も100人から120人程度に増えた。だが、日本の人口は減少傾向で団塊の世代がだんだん高齢化して、医者の数が将来的には余ることも十分考えられる。その内医学部の定員も減るだろう。
医療は普遍性があって、景気不景気に関係なく需要があるため今後なくなることはないだろう。ただし、医者も資格だけでは安泰でなく、まわりの人から必要とされるサービスが提供できないと生き残れなくなっていくのではないかと思う。最近は若い人はそれだけで貴重な人材になっていく世の中だと思う。一昔前のように”お前の代わりなんかいくらでもいるんだ”なんて口が裂けても言えない。これからの若い人は仕事がないということはないだろうが、今後どのような仕事に将来性があるかはよく考える必要があるのではないかと思う。いい大学に入り、いい会社に就職すればいい時代ではなく、これからはいかに需要がある(人から必要とされる)か、いかに仕事にやりがいを感じられるかも重要になってくると思う。