今回は医者のお金事情について書いてみたいと思う。医者は高給取りのイメージがあるが、巷で聞く一般的な平均収入よりは確実に多いと思う。かといって、派手な生活をしているかといえばそうではない。そこら辺について率直に述べてみる。
自分が研修医になった頃は、新臨床研修制度が始まった頃である。若い研修医の過労死などが問題になって、しかも給料がアホみたいに安いのでバイトをしないと大学病院では食っていけないので、それはまずいということでこの制度は始まっている(他にもいわゆる白い巨塔的な医局制度の改革を目指しているようにも思うがここでは割愛する)。新臨床研修制度が始まる前は、”学ばせていただいている”というスタンスで1年365日いつでも病院に駆けつける、呼び出しがあっても時間外は出ないという状況で、給料も大学から支払われるのは手取りで月に数万円から十五万円くらいだったように思う。人によっては結婚しているが、その額だけでは生活が厳しい。そこで大学以外の病院で当直をしたり、急患対応をしたりして生活費を稼ぐ。医者の求人を見てみるとお分かりだと思うが、バイト代は極めて高い。一晩で学生時代にバイトしていたひと月分の給料が入ってくることもザラである。ただし、医者になりたてで経験もあまりない中で、そのような状況に突然放り込まれるのは過酷であり、危険である。漫画のブラックジャックによろしくの世界である。
新臨床研修制度はそのような新卒医師の生活環境や教育の向上のために始まり、おおむね30万円程度の給料が保証される代わりにバイトは禁止になった。研修医の頃は、独身だし、宿舎に入っていたのでお金には困らなかった。飲みに行ったりするくらいであまりお金も使っていない。高い買い物はPCか教科書くらいのものである。研修期間は2年間でその後、入局といって、大体大学病院の〇〇科に所属して、その大学の関連病院で仕事をするか、病院に直接就職することになる。大学病院に入った場合3-5年目はレジデントといって後期研修期間になる。この頃は専門になる科に特化して経験を積むわけであるが、この頃の給料は大体月に40-50万円(手取り)くらいだったと思う。自分は卒後3年目くらいに結婚していたが、なんら問題なかった。その後は複数の大きな総合病院や地方の病院で勤務していた。経営母体(国立、独立法人、私立)にもよるが、大体30代の中盤が早ければ前半で年収(総支給額)が1000万円を超えたと思う。40歳前後で1200-1400万円くらいになるのではないかと思う。医者の求人広告はネットにもよく出ているし、国立病院機構のサイトでも大体の年収はホームページに掲載されているが、大体そのくらいである。
医者は高給取りであるが、ポイントとしては、頻繁に病院を移ることが多いので、まとまった退職金を受け取ることはほぼない。長期間同じ病院で勤務していれば 別かもしれないが退職金は当てにならない。それぞれの病院から異動するときにもらっていたが、せいぜい数十万円で引越し代などで消えてしまう。また、家賃手当などがない場合もあり、官舎がボロいと奥さんが住みたがらない。福利厚生が充実しておらず、土日に呼び出しや回診があっても実質40時間以上の時間外労働は報告しづらい雰囲気だった(医師の働き方改革が2024年に開始されるhttps://girimaro.com/?p=153)。引越し代も出ないことがあるので、異動が多いと引越し貧乏になる。あと、医者は子供の教育に熱心であることが多く、中学から私学に入れると、塾代も含めると教育費がえらいことになる。自分が子供の頃には考えられないが、小学生の塾代が毎月4-5万円もかかる。私学に入ると月に4-5万円の授業料がかかるので、年間一人につき100万弱のお金がかかることになる。大学に進学すると、さらに仕送りなどもしないといけないので、上記の年収があってもかなり厳しい。自分の場合はアメリカに留学もしているので、帰国後はほぼ無一文になったので、このタイミングで病気などで仕事ができなくなればゲームオーバーである。恐ろしい。ちなみに自分が使っている携帯電話はiPhone6sである。無理すれば買えなくはないが、買い換えるのも躊躇する。妻も子供もみんなユニクロを着ている。
今まで医者として生きてきた感覚だと、生活するのには十分なお金をもらっているが、子供の教育費、生命保険、家のローン、学会の会費、場合によっては出張費、教科書などにとにかくお金がかかる。昔の先生は飲み歩いていたようだが、最近は歓送迎会以外や公式行事以外のものはコロナの影響もあってほとんどない。大きな出費は家族で旅行に出かけるくらいだが、子供が大きくなるとそれも難しい。贅沢ができるのは、むしろ若い頃で30前後の頃の方が、子供も小さかったし使えるお金も多かった気がする。医者はそれなりに給料をもらっているが、やはり金持ちになろうと思うと開業するか、美容形成などにいくしかないかもしれない。奥さんも医者であれば別であるが。ただし、医者の最大のメリットは定年がないことである。65歳で一旦退職した後でも、外来などをメインに仕事を続けることができ、しかも給料も高額だ。そこが一番でかいと思う。