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一般向け

失恋からの回復(負の無限ループ)

恋愛では、最初は付き合いだしたことは相手のことが新鮮で、毎日会うのが楽しみである。しかし、段々と相手の気持ちと自分の気持ちにズレが生じてくるとお互い関係がギクシャクする。”好きになった方が負け”だと言われるが確かにその通りだ。脳科学の分野ではこの現象を、報酬系で説明することが多い。脳の血流が増加を検出できるfunctional MRIという検査をラブラブなカップルに相手の写真を見せた時の状態に行ったところ、右脳の腹側被蓋核と尾状核で血流が増加したという報告がある。これらの核はドパミン報酬系に含まれており、脳の欲求を満たすとドパミンが産生され人に快感を与える。いわゆる脳内麻薬である。

自分の経験からだが、失恋した時に、どんなに相手のことが好きでも時間が経つとその興奮は冷めて、冷静になる。引きずったり、ぐるぐる悪い感情が頭をループしても時間が経つといつかは知らぬ間に抜け出ていたように思う。自分は喫煙者だったが、30代中盤でやめた。肺気腫が心配で、階段を登ったりするときに息切れを感じたからだ。タバコを止めるときも、やめた直後はイライラしたり、また吸おうかどうしようか頭を巡ったりしていたが、長くやめていると自然に吸いたい気持ちはなくなっていった。

恋愛と喫煙を同列にするのもどうかと思うが、自分の体験ではどちらも依存からの脱却という意味では同じような経過だったと思う。依存している時は、”少しなら”、”今度この時期がきたら”などの条件を設定すると大体失敗してしまう。止めると覚悟して、我慢していると自然に欲求がおさまってくる。恋愛も喫煙も結局、ドパミンを脳が欲している状態であるのではないかと思う。”こんな素晴らしい感情が湧き起こってくるものは本物だ”と思っても脳が作り出した幻想ではないかと思う。科学的に考えると少しは失恋のダメージが軽くなるのではないかと思う。

人間の本能的な物事への好みやこだわり(性分)は変えることは難しいかもしれないが、性格は習慣や経験によって変えられると思っている。脳の中のネットワークは可塑性と言って、シナプスの神経伝達が増強されたり、減弱したり変化することができる。初めから決まった振る舞いを続けるわけではない。ドパミン報酬系のように習慣によってコントロールできると思う。

依存は自分をより良い状態に近づくようにプリセットされている人間の先祖からの記憶かもしれない。依存は必ずしも悪い面ばかりではない。長年仲良く過ごしているカップルはある意味共依存の状態であると言えるし、感情がうまくコントロールされていればとても楽しい人生を過ごすことができるのではないかと思う。ただ、仏教の教えでは”愛するものを作るな”というものがある。愛するものがいることで執着心が生じ、悩みや苦しみが生まれる。北斗の拳の聖帝サウザーである。一方で人は一人では生きていけないという考えもある。「依存 vs 独立」は難しい問題である。次はこの辺を掘り下げてみたいと思っている。

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Girimaro
40代脳外科専門医、救急科専門医、アメリカ留学経験あり 日々考えていることを記録します https://blog.with2.net/link/?id=2073035

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