自分が敬語を使う理由

自分は柔道部出身で、中学の時はゴリゴリの体育会系でマイクロバスで遠征に行くような部だったので基本的には上下関係は絶対の環境で育った。たまにテレビで見るPL学園あるあるほどではないが、一学年でも違っていると反抗することはないように教育されて育った。高校は進学校で緩かったのでそれほどではないが、基本的なスタンスとしては体育会系である。

大学生の時に自分は一年留年している。1年生の時に留年したため、入学してきたときの同期は先輩になり、1年後輩の人たちが同級生になった。新しい同級生は〇〇さんと呼んだり、女子は〇〇くんだった。敬語で話する人もいれば、タメ口の人もいた。

仕事を始めたときは、当然周りは先輩ばかりなので敬語で話をする。3年目で脳外科医になることを志し、入局したての頃に、自分とって敬語を誰にでも、特に若いコメディカルに使う理由になるきっかけとなることを経験した。ある日循環器内科の部長が心原性脳塞栓症の患者について脳外科コンサルトしてきた。自分は3年目で知識は循環器内科の部長の方が圧倒的に上なのだが、部長はすごく丁寧に患者の病歴など自分に説明し、治療方針についてどうしましょうか？と自分に聞いてきた。内心、そんなのわかっているでしょ！と思ったが、後から思えば自分を一人前の脳外科医として扱ってくれていたのである。一方で、”脳に関しては患者の責任を取れよ”というようにも解釈できた。わざわざ何歳も年上で経験豊富な部長が心原性脳塞栓の治療方針を知らないわけがない。そのとき、”自分なんかに敬語使わないでくださいよ”と思ったが、脳外科を標榜している以上、言い訳できないなと思った。変に謙遜するより、自信を持って患者や他の医療従事者と接する方が正しいあり方だと感じることができた。

自分も歳をとり、若いコメディカルの方が多くなった。タメ口で上から目線で話しても許されるかもしれないが、自分は仕事の時は医者の部下以外には基本的に敬語で接するようにしている。プロとして自分の仕事について責任感を持ってほしいからだ。それは自分が3年目の時に経験した循環器内科の部長の影響が大きい。また、仕事を離れれば、上下関係はないと思っている。自分より年上の男の看護師さんは仕事では自分に敬語で下手に接してくれているが、これは仕事中のことだから成立する。その男の看護師さんがスーパーでそのご家族含めて自分とばったり会うことがあったが、その看護師さんの子供の前で、年下の男（自分）に敬語でペコペコしてほしくはないと思っている。普段、タメ口でコメディカルに接する若い医師を見かけるが、仕事を離れれば、それぞれ立場があるので配慮すべきである。他に敬語をベースで使う理由としては、変にマウントの取り合いになることを防ぐ意味もある。自分は留年しているので、同級生なのか先輩なのかわからないような医者もいるし、自分が同級生だと思っていても相手が覚えていなければややこしくなる。いちいち考えながら話すのもめんどくさい。

社会人として当たり前かもしれないが、たまに横柄な人もいるので書いてみた。ただ、各人のキャラクターもあるので、タメ口の方がしっくりくるタイプの人もいると思うので、そういう人を否定するつもりはない。