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一般向け

自慢の息子は帰省しない

昔外来診療の待ち時間に待合室から会話が聞こえてきた。高齢女性同士で、よく聞くと息子が京都大学に進学したらしい。その後、地元を離れて有名企業に就職して親としては鼻が高いと言っていた。ただ、実家にはあまり帰らずに、一生懸命立派に育てたが結局親元を離れて暮らしており、なんだか寂しいというものだった。

上の大きな木は、自分はとても好きな絵本の一つだ。木は子供に自分が与えられる全てのものを与え、最後は切り株になって大きく成長し年老いた子供の椅子となる。それで”幸せになんてなれないですよね”というのが、村上春樹の日本語訳である。親は子供に与え、年老い死んでいく。子供は当たり前のように受け取り、成長すると我が道を歩んでいく。

家族、会社でも若者を育てて、歳をとると勇退して後進に道を譲る。そこに見返りは求めない。失恋からの回復(負の無限ループ)で述べたが、独立と依存は難しい問題である。自分は基本的に人は独立していないといけないと思っている。誰かに依存して、その人がいないと幸せが成立しないのは何か違和感を感じる。毒親、実家依存などは、本来その人が取り組まないといけない人生の宿題から逃げているように感じる。ただ、独立して人に与え続けて死んでいくときに果たしてその人は本当に幸せになれるかどうかも疑問である。上にあげた京都大学の息子に自分の遺産を与えて、望むようなお金の使い方をしてくれるかどうかはわからない。神様がみていて天国にいけるのか?実際はわからない。老後は孤独との戦いかもしれない。

もちろん人は一人では生きていけない。昔は助け合わないと生きていけなかったが、近年核家族化が進んでおり、最近ではひとりキャンプ、ミニマリスト、晩婚・未婚が進んでおり個人の時代になってきていると思う。大筋の文脈では、独立した存在になって次の世代に託すのが正解だと思う。独立した人間(誰かを自分の幸せの犠牲にしない人間)は、好き勝手に生きれば良いと思う。いい子にしていただけでは幸せになれない。自分の物語をどこかの時点で取り戻す必要がある。

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Girimaro
40代脳外科専門医、救急科専門医、アメリカ留学経験あり 日々考えていることを記録します https://blog.with2.net/link/?id=2073035

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