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一般向け

脳外科医が急患で呼ばれるパターン

一般的な市中総合病院の脳外科医が普段どのように生活しているかについて説明したいと思う。入院患者をもつ病院では医師が常に当直していないといけない。病院では各科で当直を分担しており、病院によって少々違いがあるが、外科系当直、内科系当直、小児科当直(病院による)がある。入院中の患者については、基本的に他科の患者については担当している科で対応する。急患については、当直医が診れる範囲で診察する。内科系当直が消化器内科であれば、発熱、腹痛などの患者は診察するが、胸痛など専門外の病態については循環器内科や適当であろう科の待機している医者が呼ばれる。つまり、病院に泊まっている医者は一人以上いるが、全ての科の医者が当直しているわけではない(大学病院では各科で当直しているところもある)。当直をしていないが、呼ばれる可能性があり、入院患者や急患で真っ先に呼ばれる状態を”待機”と呼ぶ。

大体当直回数は概ね月に2回程度だが、各科で年功序列で回数を割り振られる。新卒の頃は4回で医長、部長だと1回で、主任部長(科長)は当直しないことが多い。部長は普段当直をしないが、オペレーターであることが多いので破裂脳動脈瘤などの急患が来た場合は大体呼ばれることが多い。頭部外傷、脳出血やそれによる急性水頭症の場合は医長、レジデント、研修医でなんとかなることが多い手術で部長が呼ばれることは少ない。最近では血管内治療による血栓回収が一般的になってきたので、血管内治療専門医は適応症例が来れば対応しないと行けない。大体手術になると第一待機プラス一人(第二待機)で対応する。

市中病院の脳外科では規模によるが3-5人で編成されていることが多い。5人の場合は学年にもよるが、レジデントが3日に1回第一待機、それ以外で年功序列で割り振っていくので、若手の場合は大体月に10日くらいが第一待機となる、そのほか手術になると人手がいるので第二待機を割り振っているが、それもほぼ同様だと思われる。若手で全く呼ばれる可能性がない日というのは月に片手くらいの日数かもしれない。実際どの程度呼ばれるかは、病院の体制にもよる。神経内科が充実しているところでは、めまい、頭痛などの一次診療で呼ばれることはなく、手術や緊急の血栓回収の症例が来て初めて呼ばれるので、時間外に呼ばれる機会は限られている。他科の当直からの急患相談は一晩に平均1-2回、平日午後5時以降、土日祝日で緊急手術で呼ばれるのは平均すると週に1-2回くらいだと思われる。脳外科のストレスは待機しておかなければならない点だ。実際に働いているわけではないが、四六時中拘束されているため遠出ができない。もちろん、釣りやスキーなども可能だが予め他の脳外科医に頼んでおく必要がある。昔は若手だと、急患で経験を積むという面もあり、他の医者に遊びのために待機を頼むのが憚られる雰囲気があったが、最近は働き方改革も提唱されており、言いやすい雰囲気にはなっていると思う。

また、基本的に自分が初期対応した患者は自分が担当になることが多いが、主治医制の場合は何があっても担当医が呼ばれる。また複数人で担当している場合は2-3人の主治医群で患者を担当する。主治医制の良いところは、一人の医者が担当しているので全ての状況を把握できていることだ、ただ何かあれば時間外でも全てその担当医に連絡がいくため、重症の患者を担当するといつ呼ばれるかわからない状態になり疲弊する。主治医群で患者を担当する場合は、医者のQOLは良くなるが、主治医群の中で働かない医者がいると残りの医者に負担がかかることになる。また責任の所在が不明確になる。現場の意見としては主治医群で担当する方が、医療ミスも減らせれるが、必ず働かない医者が出てくるので難しい。主任部長がしっかりしていないとなあなあになってしまう。

まとめると脳外科医は常に拘束されているといえる。実動時間が少なくても、なんとなく落ち着かない状態になるのでやはりストレスかもしれない。最近では、みんなで仕事をカバーしようとする雰囲気はあるので、ある程度の人数が確保できれば、むしろ非常に患者の多く忙しい病院の方がオンオフがはっきりしているかもしれない。また、脳外科医は仕事がなければ定時になればさっさと帰るので、ダラダラ病院にいるよりはある意味健康的かもしれない。他の記事でも書いたが、これからはスキルが無い、需要がない医者は淘汰されていくと思われる。仕事があり、それが特殊である方が自分の価値はより一層高まると思う。

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Girimaro
40代脳外科専門医、救急科専門医、アメリカ留学経験あり 日々考えていることを記録します https://blog.with2.net/link/?id=2073035

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