G-GS8JC1XTD1
学生・研修医向け

将来何科医になりたい? それが問題だ

 医学生、研修医が臨床実習あるいは研修で脳外科に来たときに彼らにする話をしたいと思う。医学生、研修医はまだ、特定の診療科に特化しているわけでなく、色々な科で実習・研修を行っている。それらを通して将来的に何科を選択するか判断していくことになるのだが、自分の特性や将来自分が選びたい診療科についてわからないことが多い、というかわからない。実際働いてみないとわからないのに臨床研修医の2年間が終了すると、役人や研究者になる以外の、ほとんどの研修医は選択を強いられる状況になる。紐が何でできているかわからないバンジージャンプを飛ぶようなものである。

 まず最初に考えるべきなのは、「人が病気で死ぬ」科を選ぶかどうかだ。大学病院だと特殊な疾患を扱うためこの限りではないが、一般的な市中の総合病院で「人が病気で死ぬ」診療科は主に、内科、外科、産婦人科、小児科、心臓血管外科、脳神経外科、救急科などがあげられる。そのほか、病院と診療科の規模によっては耳鼻科、泌尿器科なども該当するかもしれない。「人が病気で死ぬ」状況というのは、当然緊急事態であって、急いで対応しないといけないため、毎日緊急事態に対応するための待機が必要になり、それによる呼び出しもかかる事になる。そうなると遠出もできないし、ほぼ毎日患者の様子を確認するため週末も回診しないといけなくなる。自分のQOLは低下するのは致し方ない。このような状況が、自分にはあっていないと考える場合は、麻酔科、放射線診断科、病理診断科、交代制の救命科などが適しているかもしれない。

 次に人が死ぬ科でどの科を選ぶかだが、大まかには内科系、外科系という話になると思う。自分は外科系に属しているため内科の細かい内容はよくわからないが、今まで伝聞してきたことをもとに話したいと思う。内科は基本的にエコー検査、内視鏡検査など10数件の検査をこなしたり、外来患者をたくさんみたりと、”繰り返し”の作業が多いと思う。(ちなみに、自分はどちらかというと飽きっぽいところがあって、同じ作業を繰り返し行うことが苦痛なので、外科系に進んだ。)また、病気を診断することが要求されるため、多く鑑別疾患をあげる必要があり、従って丁寧に診察して多くの身体所見をとり、採血学的、あるいは画像所見などについて精通する必要がある。イメージであるが、内科の先生はよくも悪くも遅くまで病院に残ってカルテを書いている印象が強い。

 続いて外科系だが、外科系の中でも、それぞれ科によって特徴があり、一般外科や心臓血管外科は内科である程度診断がついた上で患者さんが紹介されることが多いと思うので、診断というよりは手術手技が要求されるように思う。もちろん、内視鏡や血管造影などの内科的な検査も外科で行われる施設も多いが、診断目的というよりは、非侵襲的な治療目的で行われている印象だ。整形外科は内科がないため、診断から治療まで一貫して行っている。脳神経外科も地域によっては、神経内科が脳卒中をあまり診察しない場合は、自分で画像検査などから脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の診断を行い、適宜外科治療の必要性を判断する。一般外科、心臓血管外科が野球で言うところの、中継ぎから抑えの役割を行うのに対して、整形外科や脳外科は先発完投タイプと言えるかもしれない。耳鼻科、泌尿器科、皮膚科、眼科なども同様に先発完投タイプであるが小さい病院では内科的治療のみで外科手術を行わない施設もあれば、大学病院や大きい総合病院では手術まで行う。一般外科や整形外科は手術件数のボリュームが大きく、定期手術が多い(大きめの総合病院であればゆうに、年間1000件を超える)。脳外科の定期手術は週に1-2回である(手術が多い施設で年間300件を超える程度)のに対して、外科や整形外科では毎日手術が行われており、ルーチンワークが多い。一般外科の先生は朝早く来て、病棟業務をこなして、手術に入り、夕方回診をして帰るという感じだ。一方脳外科は脳卒中、頭部外傷を見ることが多いので、午前中に病棟の回診を済ませると外来や血管造影検査などの用事がなければ、比較的時間に余裕がある。しかし、夜間や休日に呼び出しがあり手術を行わなければならない。イメージとしては、週に1回時間外に緊急手術をしている感じか(続くときは続くが)。だから、脳外科は帰れる時は帰るので、定時になればさっさと帰宅するし、帰っても良い雰囲気はあるかもしれない(各大学の医局によって違うことは言っておきたい)。

 以上、内科系、外科系の業務の面からの特徴を挙げてみたが、それぞれの科のキャラクターについても述べてみたい。外科系は体育会系と言われているが、それは主に、手や体を動かして治療を行うことからきているかもしれないが実際は、内科も体育会系の雰囲気はあると思っている。内科や一般外科のように人数が多い科は、一つのチームに研修医1年目、2年目、レジデント、大学の場合は大学院生、スタッフのように5階建てであるが、脳外科などのマイナー科は、研修医が必ずローテしているわけではないし、多くの場合はレジデント+スタッフで見ている印象である(つまり2階建て)。人数が多い科は、若い先生にも辞められても代わりがいるため、結構厳しく指導してもいいやという雰囲気があるかもしれない。マイナー科は辞められては困るので、あまり理不尽なことをしていると結果的に自分の首を絞めることになる。体育会な雰囲気はそれぞれの科に所属してる人数の多い少ないにも影響を受けると思う。

 アメリカでは外科系は給料が高く、1億円プレーヤーも可能だが、日本では基本給は各科同じである。時間外の部分だけ脳外科は少し多いかもしれないが、勤務医の場合は給与はあまり科の選択には影響しないかもしれない。開業や私立病院の場合は、やはり診療報酬に影響を受けるので、手術や急患をみる科の方が高収入を期待できるかもしれない。

 結局、何科を選択するかは、仕事の面白さやそれぞれのライフスタイルの志向で決まるのではないかと思う。それぞれの科で似たような人が集まってくるので、部活の選択と似ているかもしれない。雑多でまとまりのない話になってしまったが参考になれば幸いである。

ABOUT ME
Girimaro
40代脳外科専門医、救急科専門医、アメリカ留学経験あり 日々考えていることを記録します https://blog.with2.net/link/?id=2073035

PVアクセスランキング にほんブログ村

脳外科医のつぶやき(心のビタミン) - にほんブログ村

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA